■2018年3月28日(水) On-Site Reort 317号
●クルミ殻を利用した新バイオマス燃料
WNS(Walnut Shell)上陸
脱炭素社会構築に向けた、WNS燃料の可能性
本格導入に向け燃焼テスト用にコンテナ入着したWNS
バイオマス発電実機での燃焼テスト結果も上々(右)
脱炭素社会構築に向けた再エネ利用が進む。中部地域で複数企業が関わるグループは新たにクルミ殻(Walnut Shell:WNS)にターゲットを当てて燃料化を進めている。
使用するWNSの調達ソースは米・カリフォルニア州。供給可能規模は月間約1万t、季節変動はほとんどないといわれているので、年間では10万t超の供給規模になる。水分は11〜15%で熱量は実機での燃焼テストの感触では4,000kcal/kgを超えているもようで、通年供給できるから燃料としては申し分ない。元のサイズは手の中に2つくらい入る一般的なクルミで、ある程度硬さもあって実を取り出すための割ってあるため、発電用PC(pulverized coal、微粉炭)ボイラ以外で燃料使用する場合は、新たに破砕・粉砕する必要はない。他の燃料との混焼も容易。ピンチップ利用を前提としたストーカ炉で使用する場合でも、搬送系を工夫してベルコンをバケットタイプにするなど部分的な改修工事で対応できるという。さらに良いことに保管状態の悪いPKSで報告されるような独特の臭気がなく、露天で保管する際に雨が降っても濁水は出ないという。
価格については本格的にサプライチェーンが稼働しなければ落ち着いてこないが、当初計画ではPKS、木質ペレットなどと比べて競争力のあるコストを提案できるという。
FIT(再可エネ電力固定価格買取制度)に乗せる場合、クルミ殻で発電した電力については、輸入木質ペレットやPKSと同様、買取価格は24円/kWh(エネ庁関係者)。
新たなバイオマス燃料調達に取り組む当該グループはバイオマス発電事業者や素材生産業者、燃料調達事業者などもネットワークに抱えている。すでに、本格的な供給をまえにWNSをコンテナ等で輸入して商用バイオマス発電を行っている実機での燃焼テストも行い、上々の結果を得ているという。
今後は、需要をにらみながら現地との調整を行って商流を確定、サプライチェーンを構築して、早ければ今夏以降の本格導入したい考え。