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■2021年1月13日(水) On-Site Reort 451号――FIT算定委 直近論点

要点整理は第61・65・66回に、業界団体ヒアリングは62回でまとめ――算定委経緯

21年度でGGL認証追加も新B燃料採用見送り、FIP併設

 年を跨いで、第65回・66回と2つのFIT調達価格等算定委が矢継ぎ早に開催された。日程は前回が昨12月23日、今回がこの1月12日(火)。65回のテーマは2020年度課題のうち地域活用要件、地熱、中小水力、バイオマス。
 そもそもの前提となる本年度算定委における重要な論点案は、昨年9月29日開催の第61回で提示されている。直近算定委の流れをつかむためにも同回で提示された主要論点について、バイオマスに特化して要諦を抜粋しておく。

(上表のテキスト)●2020年度算定委開催履歴と主議題
2020年4月24日第56回入札意見
2020年6月5日第57回コロナ影響入札
2020年8月19日第58回着床式洋上風力
2020年9月15日第59回着床式洋上風力 供給価格上限
2020年9月29日第60回入札(太陽光第6回)の上限価格について
2020年9月29日第61回今年度論点総括
2020年10月30日第62回各団体ヒアリング
2020年11月27日第63回風・太陽の21、22年度扱い検討
2020年11月27日第64回太陽光第7回・着床式洋上風力第1回・バイオマス第3回入札上限
2020年12月23日第65回重要総括、持続可能性WG報告
2021年1月12日第66回

●昨年9月開催、第61回で年度の論点案提示
 算定委の検討に係る他会議体などの背景は以下のようなもの。
 ・再エネ主力化小委のFIT抜本見直しと整合的に進めるが、制度の複雑化は防ぐ。
 ・"エネルギー供給強靱化法"(20年6月成立)で2022年4月からFIP制度が併用される。
 ・分散型電源配電事業と、それら束ねて電気供給するアグリゲーターを法律上位置付ける。
 ・再エネ共生地域社会構築に向けレジリエンス(=電力システム強靭性)・需給一体を促進。
 ・FIPは「再エネ主力化小委×再エネ大量導入・次世代電力NW小委」合同で設計が進む。
 これらの背景を踏まえた算定委での要点は以下のようなもの。
 ・22年度施行予定のFIP制度の対象区分・価格・交付期間なども一定の目安などを示す。
 ・1万kW未満のバイオマス発電は22年4月以降地域一体型にFIT適用。
  ・複数年度の調達価格等の取扱い、価格設定・入札制適用についても検討する。
 ・21年度入札の対象範囲・募集容量・上限価格等の設定。
 ・新燃料の取扱い等
 ついでに62〜64回の概括をおこなうと、62回(20年10月30日)は各業界団体ヒアリング、63回(11月27日)は太陽光・風力に特化、64回(同日)は、63回と同日、非公開で開催されもので、太陽光第7回・着床式洋上風力第1回・バイオマス第3回各入札についての上限価格がテーマ。

●12月開催の第65回算定委での議論要諦
 12月開催の65回では、61回の論点のうえ、62回に実施された業界団体ヒアリングなどを踏まえた資料が提示されいる。議論すべき主題としては大きく2題。
 「地熱発電・中小水力発電の2022年度以降取扱い」
 「バイオマス発電の2021年度、22年度以降取扱い」
 そのうちバイオマスについての検討事項は以下のようになっている。
・21年度取扱いを決定する一般木材、液体燃料の入札対象範囲などの設定
・新規燃料の取扱い。
・2022年度に地域活用電源となる可能性は10,000kW未満。さらに要件を具体化。
・自家消費型要件、22年度以降の調達価格等も検討
・22年度にFIP制度対象となる区分等は、一定の目安などを提示

●バイオマス発電のFIT認定量・導入量
 議論の前提となる、「バイオマス発電のFIT認定量・導入量」については、随時同じ体裁で公表されているが、2020年6月現在の直近情報で更新されており、下のグラフのようになっている。
 一般木材等バイオマス発電・バイオマス液体燃料のFIT認定量が急増したことで、FIT制度開始前の導入量と2020年6月時点のFIT認定量を合わせた容量は、バイオマス発電全体で1,085万kW。つまりエネルギーミックスの水準(602〜728万kW)をはるかに超えていることが再確認された。




●本費と運転維持費のコストデータ
議論の参考としてコストデータ資料が紹介されているのが興味深い。地の文(テキスト)で紹介された情報のうち、資本費と運転維持費を以下の表組にまとめた。

●燃料コスト情報 
  また、事務局が作成した資料では、貴重な直近の燃料コストデータも提供された。
  提供されている情報は熱量当り単価だが、そこから、重量(BDt)当りの単価を推計して以下に作表した。推計で使用した木材の絶乾熱量は16.7GJ/BDt(4,000kcal/BDkg)とした。

 併せてここでは、到着水分や炉前水分などとも呼ばれることがある、実際の利用時水分でも推計した。
 ロース(未利用材)(2MW未満、29件)の熱量当り価格の平均値は表組にあるように984円/GJ。本誌推計の重量当り価格は16,500円/BDt。絶乾でなく、水分50%の生トンだと8,000円/生t強となる。
 同じくロース(未利用材)で2MW以上(83件)の熱量当り平均値は1,185円/GJ。これをBDt当りにすると19,800円で、やはり水分50%の生トン換算では10,000円/生t弱。
 カルビ(一般木材)区分では、ペレット(27件)の熱量当り価格の平均値が20,753円/BDt。ペレットの製造直後の水分は一桁台もあるが仮に10%ということで推計すると、利用時トンでは18,700円/t。
 カルビ区分の木材チップは12,084円/BDtだが、伐りたての丸太は樹種・時季によって水分がかなり変動するので確定的なことは言えない。水分を仮に50%とすると生トンで6,000円/生t。
 PKSは14,510円/BDt。この水分は発電事業者によって要求水準には15〜25%と幅があるが、仮に水分20%とすると、到着トンでは12,000円/t。
 バイオマス液体燃料については4件からのコスト情報収集結果で、平均値が2,230円/GJとされた。同燃料をパーム油と考えて、水分を斟酌せずに36.2GJ/BDt(8,660kcal/kg)として単純計算するとトン当りのコストは81,000円/tになる。

●事業者から収集した燃料コストと、輸入バイオマス価格などとの比較
 ここ数ヵ月、未利用材2MW以上案件で使用する国内の原木丸太は木材市場において7,000〜9,000円/tで取引されている地域もある。これに発電所までの輸送コストとチップ化コストなどを加算すると、エネ庁収集コストデータの平均値1万円/生tを軽く超えるケースもあるとみられ、1万円/tを超える地域は全国相場よりも相当厳しい環境で燃料調達を行っているとみていい。
 またペレットについて、輸入ものに関しては港着CIF価格の平均は19,300円/t(2019暦年財務省貿易統計)。これも横持費用を加算すると、算定委が事業者に提出させたコストデータ18,700円/tよりやや高めになる。
 パーム油については2019暦年の輸入数量はステアリン(固体状態)、オレイン(液体状態)を合わせて78万t/yで、CIF価格は平均で約70,000円/t。
 ざっくりみれば、算定委が事業者に提出させたコストデータは、本誌編集部の肌感覚とおおむね整合する。(輸入バイオマスの数量・CIF価格は次ページの表組参照)


●木質等バイオマス発電の設備利用率
 エネ庁は資料中、国内動向のひとつとして木質等バイオマス発電の設備利用率をまとめている。
 未利用材(2MW以上)は76.4%(データ収集件数37件)、一般木材等は61.2%(47件)、未利用材(2MW未満)は52.8%(18件)とぎりぎり5割を超えた。建設資材廃棄物は5割を切って、48.7%(17件)。
 これらのデータを分析した結果、未利用材(2MW以上)・一般木材等(10MW以上)の設備利用率が高い傾向にある一方で、未利用材(2MW未満)・一般木材等(10MW未満)は比較的低い傾向にある。これは、小規模案件は主に国内から燃料調達を行っており季節変動等により、国内材の安定的な調達が必ずしも容易ではないことが一要因、と理由づけている。



●21年度の取扱い
・入札――一般木質(1万kW以上)・液体燃料
 21年度入札は、18年度から対象となっている一般木質等(10,000kW以上)および液体燃料(全規模)について引き続き、2021年度も入札制の対象とし、上限価格は事前非公表とする。
・入札外の調達価格
 一般木材等(10,000kW未満)の調達価格根拠は、20年度の調達価格における各想定値を用いる。
・新規燃料――現行燃料以外の新規燃料は認めず
 注目される問題のひとつ、木質ペレット、PKS、パーム油以外の新規燃料の取扱いについては、"専門的・技術的検討"のために2019年度、バイオマス持続可能性WGが設置され、20年度も「食料競合」「ライフサイクルGHG」「第三者認証スキームの追加」について検討中。第65回算定委では「2021年度については、バイオマス発電の新規燃料を認めない」と事務局は提案。委員から強い反対はなかったためおそらく、この線で決定される。
・持続可能性確認に係る経過措置
 持続可能性確認に係る経過措置としては、バイオマス持続可能性WGで取りまとめられた内容を算定委でも承認するかたち。
 第三者認証機関における審査が想定以上に遅延していることなどから、発電事業者が第三者認証を取得したバイオマス燃料の調達のために必要な準備期間を確保して以下とする。
1)パーム油の持続可能性確認に係る経過措置を、2022年3月末まで1年間延長する。
2)PKSとパームトランクの持続可能性確認に係る経過措置を2023年3月末まで1年間延長する。

・第三者認証制度――GGLが新認証スキームとして追加
 新たな第三者認証スキームの追加については、2020年11月30日開催の「バイオマス持続可能性ワーキンググループ第9回」で現行認められているRSPO(パーム油が対象)およびRSB(PKSとパームトランクが対象)に加えて、GGL(PKSとパームトランクが対象)を追加して認める提案がされた。スキームとして検討を行った第三者認証制度についての評価結果は下表。

●2022年度以降の取扱い
 ・FIP(Feed-in Premium、再エネ電力プレミアム付加)制度は2022年度施行。
 ・新規認定FIPのみの対象区分――22年度は原則10,000kW以上、以降早期に1,000kW以上。
 ・一般木質等(10,000kW以上)・液体燃料(全規模)はFIP適用、かつ入札。
 ・22年度液体燃料は50kW以上。
 ・新規認定FITの対象区分は22年度から10,000kW未満かつ地域活用要件を満たすものに限定

・メタン発酵バイオガス以外のバイオマス発電(入札対象範囲外)<調達価格・基準価格>
 2022年度の、メタン発酵バイオガス以外のバイオマス発電(入札対象範囲外)
 1)一般木材等(10,000kW未満)
 2)未利用材(2,000kW以上)
 3)未利用材(2,000kW以上)
 4)建設資材廃棄物
 5)一般廃棄物その他バイオマス
 各区分等の調達価格・基準価格については、2021年度調達価格の各想定値を用いる。

・メタン発酵バイオガス発電
  調達価格・基準価格における各想定値は、メタン発酵バイオガス発電のいずれの規模についても22年度は変更せず、23年度以降は来年度以降の算定委で検討する。
 ・2023年度以降の取扱いは、来年度の算定委で決定する。



(本文ここまで)